海外留学の常識&非常識 (第16号・17号'00年7月〜9月) by Mieko Fujioka and Naoyuki Nishimura 今や海外留学は、将来の選択肢の一つ。書店では何種類もの留学雑誌が並び、インターネットでも留学に関するサイトは数え切れません。しかし情報の海の中、すっかり「迷子」になっている人や間違った知識を持つ人が急増しているのも事実。という訳で、今回は北海道で二〇年以上も学生達を海外に送り出してきたSEA国際教育研究所の藤岡さんと、語学留学、ホームステイの相談を数多く受けている北海道留学センター代表の西村さんに、海外留学に対するよくある「誤解」や「非常識」について対談して頂きました。 西村 実際にカウンセリングに来る皆さんのお話を聞いていると、本人と両親の間で少なからず留学に対する理解のギャップがあるようです。社会人の場合も、留学に関するイメージと現実の間に多少のズレがあるようですね。 藤岡 そうですね。誤解にも色々あるようです。留学プロセスの時期ごとに常識・非常識をお話ししていきましょうか。
西村 留学したいと考え始めると、本屋さんで留学専門誌を立ち読みしたり、インターネットで留学情報をサーチしたりするようですね。私もどのような情報が出ているのか、時々本屋さんに立ち寄ってみます。その度に思うんですが、雑誌には良い事ばかり載っているんですね。当然といえば当然ですが、そのイメージを自分に当てはめて想像してしまうと、そこからギャップが広がっていくと思います。また、相談に来る人で多いのは「どの学校がいいのでしょう?」と混乱している人です。 藤岡 たまに、この人は同業者じゃないか?と思うほど情報を持っている人に会うこともありますね。でも、肝心なところは留学雑誌のレベルを超えていない。留学雑誌を過信するのも危険です。製作している人達全てが留学経験者とは限らないし、まして留学形態の全てに精通している訳ではないですから。すでに出版されている資料を元に作られた二次的な情報誌もある訳です。留学に関しては毎日のように現地の学校と連絡を取り、進路指導にあたっているカウンセラーが一番生の情報を持っていると思います。情報量は現地(=例えばアメリカ)の教育関係者よりはるかに上かもしれませんね。
西村 準備段階に入ると留学する国の情報や、パンフレット、願書を取り寄せることになりますが、ここでどういう基準で学校を選択するのか、分からない人が多いようです。例えば留学専門雑誌などの学校一覧を見ると、どの学校も「GOOD」なんですね。結局、授業料で比較したりする。逆にカウンセリングが進む内に、留学のトータル費用が見えてきて、アメリカを希望していた人が、カナダやオーストラリアに留学先を変更するケースも結構あります。大学の正規留学の場合は、どうですか? 藤岡 正規留学の場合は希望国の変更は殆どありません。しかし、自分の実力にそぐわない大学に固執するブランド志向の人が多くいます。教育は買い物ではないので、自分が費やす時間と学習労力、資金の投資効果を最大限に考えて欲しいと思います。
西村 学校の選択が終わり、いよいよ願書提出となるわけですが、正規留学や専門学校留学ではTOEFLテストを受けて、その結果を添付しなくてはいけない。よくTOEFLの点数が少し足りないと相談を受けます。専門学校は付属の語学学校がある場合は、八週間から十週間の語学研修を受講することで仮入学が許可されるケースがあります。「TOEFL免除で入学できる」と広告しているところがありますが、その殆どが付属の語学学校への入学で、いつ大学に入れるか分からない場合が多い。 藤岡 非常に深刻な問題です。語学プログラムには大学が直接運営し、単位も認める所と、民間の語学学校が大学の委託等で運営している所があるので、そこの違いをきちんと認識する必要があると思います。二〇〇〇校近くあるアメリカの4年制大学の内、当校が留学希望者のためにセレクトしている学校は上位約一〇〇〇校ですが、TOEFL免除の学校は一切ありません。もし、自分がまともな学校の関係者と想像したら、授業に使う言葉の能力が分からない人に入学を許可しますか?最近は現地の学生同様に英語や数学の診断テストを要求する傾向もあります。 西村 出発直前までの常識・非常識について話をしましたが、話すことが沢山あって一回では語り尽くせませんね(笑)。最後に一言、日本で勉強をしなかった、学校の欠席が多かった人が、海外の学校に入学することで人が変わったように勉強熱心になり、無遅刻、無欠席になるとは思えません。留学を考えている人は現在の生活習慣を見直して下さい。
西村 出発が近づくと、何を持っていくか、どんな服装で行けばいいのか、お金はどうしたらいいかなど、心配しますよね。私は留学時代、休みに帰国した時に靴下と下着類を大量に買ってアメリカに戻りました。日本の3足千円の靴下は結構長持ちするんですよ(笑)。でも靴やジーンズ、Tシャツ、ブルゾンなどは全て現地で安い品を買いました。なにせ北米では大型で強力な洗濯機、乾燥機を使用するので、服が傷んだり縮むなんてしょっちゅう。日本で買った高い服をだめにしてしまった話をよく聞きます。服装に限らずどのようなアドバイスをしていますか? 藤岡 持って行く物については、どうしても必要な物だけを持参するようアドバイスしています。電子辞書とコンピューター以外は現地で全て購入できます。寮のスペースは限られているし、長期の休みには部屋を空っぽにする必要があるので、極力荷物は少なめを心掛けるべきです。 西村 「仮入学」が認められて留学する場合、学校付属の英語クラス(ESL)を取りつつ、数単位の学科を取ることが許可されますが、いつまでたってもESLに通いつづけている人がいます。専門学校留学でこのような生徒さんがいて、現在も学校側に補修授業の設定やチューター(家庭教師)の依頼をしています。この専門学校では一度試験に落ちると、次の試験まで5週間待たされます。これは大きな時間のロス、お金のロスですよね。 藤岡 大学の場合、ESLの単位も卒業単位に認めてもらえます。しかし通常は十二〜ニ四単位までなので、それ以上在籍すれば当然ながら卒業までに余計な時間がかかります。あまりにも当たり前ですが、留学する前に会話以上の英語をきちんと勉強しておく事です。入学ではなく「卒業する」が目的である事を忘れないでほしいですね。
西村 学校に事前に申込んでおけば空港に出迎えが来ています。正規留学の場合はそこから寮に向かう事が多いと思いますが、最初からアパートを借りる生徒さんはいますか? 藤岡 殆どの生徒は寮に入ります。1年生は必ず寮に入ると決まっている大学もあります。大学によっては入学前にルームメイトの名前や住所、入寮に必要な物品リストや気候の情報も提供してくれ、突然ルームメイトから手紙やEメールが来るケースもあります。州立大学では早めに申込まないと寮に入れない場合もありますが、そのような場合でも大学側がアパートの情報を提供してくれます。 西村 語学プログラムからスタートする場合は初日にプレースメントテストを受けますね。自分で受講するクラスに申込んで、必要な教科書を購入する場合は、大きな大学だとクラスの場所がわからず結構歩き回ることになりますよね。 藤岡 そのようなことがあるので、大きな大学は正直なところあまりお勧めしません。小さめの大学でサポート体制が充実しているところを選ぶべきでしょう。いきなり難しい授業を取って単位を落とすと困りますから、最初はアドバイザーと相談しながら単位の取りやすそうな授業を選ぶといいですね。良い成績を残せば奨学金獲得への実績にもなります。 西村 蛇足になりますが、海外での車の免許はどう思いますか? 私はアメリカで取得しましたが、学校には通わず、受験料は確か三五ドルくらいだったと記憶しています。車を持てば当然、何かと維持費がかかりますが。 藤岡 私の息子も中学校を卒業してすぐに留学し、高2の時に授業で免許を取りました。これはただでしたよ。確か免許証の申請料だけで十数ドルでした。でも、車検がないだけに中古車は年式と走行距離を考えると高いですね。維持費もかかるので簡単な故障は自分で修理するくらいの心づもりでいるべきでしょう。自動車保険も二〇歳代前半までの若年層、運転者の条件や車種条件(新車、高級車、4WD車、赤色の車など)によっても保険料が割高になるようです。 西村 さて、留学中の紛れもない常識は、「今までこんなに勉強したことがない」くらい頑張らないと卒業できないということ。語学留学でもそれは同じ。欠席せずに通っていれば退学にこそなりませんが、努力しなないと会話力だってそう簡単にはアップしません。これから留学する方々には、このことをしっかりと覚えておいてほしいですね。
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